■……薔薇色ドレスバラバラ事件後日談〜思い出の値段〜……■
検品ミスは、当社の落ち度。賠償させていただくことに。
前号でご紹介した、薔薇色ドレスのバラバラ事件。
探偵ものなら、犯人が判明したところで「The End」ですが、クリーニングの現場では、これから先が大変かつ重要なのです。
あの事件は、パーツをつなぎあわせていたボンドが、ドライクリーニングの有機溶剤でとけたために起こった悲劇でした。
裾や縫い代がミシンで几帳面に始末されていた服が、実はボンドで合体させたものだった……。
これが、たとえばスパンコールなどをはりつけるためとか、裾の始末とかのわかりやすい部分でボンドが使われていたら、受付担当者だって最初からお断りしていたと思います。
あるいは工場で「待った!」がかかったはずです。
とはいえ、「きちんと縫製されている品だ」と思い込み、検品段階でボンド付けを見抜けなかったのですから、やはり、クリーニング側の失策です。
お客様に現物をお見せしながら、状況をご説明しました。
「せっかく上手に縫えたドレスだったのに!」
「ワタシのシンデレラドレス、こわれちゃった……シクシク……」
お客様とお子さんに涙ながらに責められ、ただただ平身低頭の私です。
そうですよねえ、世界にたった一着の、ママの手作りドレスですもの。
お客様のお怒り、お嘆きはごもっともです。
誠意をこめてお詫びし、弁償させていただくことになりました。
申し訳ありません。
クリーニング賠償基準に「思い出」の計算はないのです……。
業者側の責任で事故が起こったときは、全国クリーニング環境衛生同業組合連合会が定める「クリーニング事故賠償基準」に基づき、弁償させていただくことになっています。
賠償額は、
衣類の再取得価格(事故発生時における同一品質の新品の市価)
をもとに、所定の計算式や割合を使って計算していきます。
各アイテムの耐用年数と、いつ買ったか、どんな状態なのか、といった観点でランク分けして、賠償割合が詳細に決められているんです。
ドレスの場合、耐用年数5年となっています。
既製品なり、オーダーメイドなり、よそで購入した品であれば、ほぼ新品で使用状態も良好でしたから、ドレス代全額弁償という計算になるのでしょうが……。
今回バラバラになったドレスは手作り。
「市価」なんてありません。
こういう場合は、一律にクリーニング料金が基準にされてしまうのです。
ドライクリーニングであれば、「クリーニング料金の40倍」。
ランドリー(水洗い)なら、「クリーニング料金の20倍」と、自動的に算出されてしまいます。
極端な話、制作費数百円の服も、1メートル数千円しちゃうような高級素材で作った服も、同じ賠償額になるという基準なのです。
誠に残念ながら、手作りドレスにこめられたお客様の愛情だとか、思い入れは「0円」なんですね。
衣類を手作りなさる方へ。
どうぞ縫製は万全に!
ボンドは絶対使わないで、キッチリ仕立ててくださいね。
もちろん当社のほうも、この事件以来、さらに検品のチェック項目を増やしました。
二度と、同じミスを繰り返さぬように……。
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