■…カビたポロシャツが生んだ武勇伝!?…■
熟練のプロだって冷や汗モノ! 手強〜いカビの汚れ
ああ、今日も雨。うっとーしーですねえ。
今の時期に多いものといえば、カビがらみのトラブルです。カビ汚れはプロにとっても厄介なんですよ。繊維の奥深くまで菌糸がのびて変質させてしまっていることもあるし、色素沈着を起こしていたりもします。そのまま洗濯してもそう簡単には落ちません。
そこで、漂白剤や過マンガン酸カリウムなどで処置することになるんですが…。これが、相当な熟練工でもひやひやモノ! 漂白剤の温度をちょっとあげれば、きれいにカビの色は抜けるけど、ほんの一瞬、タイミングが遅かったばかりにシミばかりか生地の色まで抜けてしまうなんてことも稀にあるんですよ。
カビ抜きの失敗、なんと持ち主は○○組の親分!
そういえば、数年前、国産大手アパレルメーカー製のポロシャツで失敗した例がありましたっけ。お腹のあたりにあった大きい黒カビ汚れを抜いていたら、シミの周辺の生地の色まで抜けてしまったんです。
しみ抜き担当者は平身低頭、すっかりしょげてしまいました。
クリーニングトラブルは絶対に起こしてはならないとスタッフ一同、日々神経を使っています。でも、起こってしまったトラブルには誠心誠意対応するのが、喜久屋/e-closetのモットーです。謝罪とその後の対応は本部のお客様担当係である私が行うことになりました。
メーカーに問い合わせたところ、ポロシャツはその前年に発売された1万円相当の品でした。
さっそく、持ち主のお宅まで謝罪に伺いましたところ…豪奢なお宅の門柱には「○○組」という看板が!
そう、ポロシャツをクリーニングに出したお客様は、親分さんだったのです。
門前に立つこわもてのお兄さんたちに、おそるおそる
「いつもお世話になっております。クリーニングの喜久屋の…」
と声をかけると、話が通っていたのでしょう、すぐに中に案内されました。
玄関から親分さんのお席までのルートの両脇には若い衆がずらり! まさに任侠映画の世界そのままです。
ソファに座っていた親分さんは、これまた映画にそのまま登場しそうなくらい恰幅がよい男前でした。
怖くなかったといえば嘘になりますが、どんなお客様であれ、どんな衣類であれ、対応は常に平等です。トラブル対応マニュアルにのっとって、こちらのミスでお客様の大切なお洋服を傷めてしまったことを心からおわびし、今回は当社のクリーニング賠償規定にのっとって補償する旨、ご説明しました。
「というわけで、補償の金額についてですが…」
ここで本来なら「クリーニング事故賠償基準」にもとづき、メーカー販売価格はいくら、アイテム別の平均使用年数が何年、購入後の経過月数や品物の状態に応じて補償割合は何パーセントになる云々…と具体的な数値を提示してご説明します。
でも、イザというときはやけに肝がすわるたちの私。親分さんのお顔を見てふと、こう思いました。
大勢の子分たちが見守るなか、具体的な金額を口に出して交渉をするのはいかがなものか…。場合によっては、親分さんの顔をつぶしかねない…!?
そこで
「…当方で調査しましたメーカー販売価格を基準に、クリーニング事故賠償基準にのっとって算出した金額をお支払いするという形でよろしいですか?」
金額にはあえてふれませんでした。
「ではそのように…」
親分さんは鷹揚にうなずき、帰り際にはなんとお土産まで持たせてくださいました!
この話は以後、社内で語り継がれるうちに次第におもしろおかしく脚色されまくり…
クレーマーを操って企業を脅迫する△△組に単身乗り込み、得意の空手で組員を叩きのめし、親分を改心させた…
若頭ともみあっているときに匕首が左腕をかすったので、治療費と慰謝料がわりに、札束がぎっしりつまった菓子折りを渡された…
なんて、任侠映画と時代劇とジャッキーチェンのアクションムービーがブレンドされた荒唐無稽なストーリーに発展しちゃいました。
…ぜんっぜん、違うんだけどなあ〜(^^;。
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