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衣類の虎MORE!
第三項・【クリーニング業界で虎視眈々】昭和クリーニング立志伝喜久屋創業者・現会長、中畠憲治が見てきた昭和とクリーニング業界
●vol.25 「信一の下積み時代」
●vol.26 「みんな仲間」
●vol.27 「名物社長の名言」
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vol25

■…老舗クリーニング店発・業界秘話「信一の下積み時代」…■


2代にわたる「たたき上げ」


昭和60年4月。
憲治は長男・信一を、まずできたばかりの草加工場に配属した。
業界初の女性工場長をはじめ、スタッフ達は信一を特別扱いせずに迎え入れた。

信一は、他の新人達とともにクリーニング作業の習得に励み、クレーム対応なども行なった。
慣れない仕事、初めて経験する顧客とのやり取り。
まさに「たたき上げ」の日々だった。

そして信一は、その経験に応じて、徐々に責任のある立場になっていった。
憲治にとって、まるで数十年前の自分を見るようだった。

裸で話し合う責任者のあり方

「父さん! いい?」

その夜、憲治はいつものように仕事を終え、一風呂浴びているところだった。
そこに信一が入ってきたのだ。

信一は、毎日憲治への報告と相談を欠かさなかった。
時にはこうして、男二人、湯船に浸かりながら話し合った。

「今日は、あるスタッフのミスで、こんなことが起きてね……」
「そうか。で、おまえはどう対処したんだ?」
「いや、応急処置はできたんだけどね。
ほんとうにその方法でよかったかどうか、悩んでいるんだよ。
特に、その失敗してしまったスタッフに対する対応でね」
「信一。失敗は叱るな。原因を追究しろ!」

いつも憲治は繰り返した。

「人は誰でも失敗する。問題はその原因だ。
個人を責めても、失敗は減らない。
なぜなら、その根源を取り除いていないからだ。
その人間は叱られたことで、ミスを起こさないようになるかもしれないが、いつか別のスタッフが同じミスを起こすだろう。

いったい、失敗の原因は何なのか?
ラインか、機械か、作業量か、作業時間の配分か?
それとも作業環境か?

では、その部分を解消するためには、どうしたらよいか。
自ら考え尽くし、そしてスタッフと話し合うことだ。

解決策を見出したなら、迅速かつ徹底的に実行する。
それが責任者のもっとも大切な仕事だ」

信一は深くうなづくのだった。

「ありがとう。父さん。さっそく明日、朝一でみんなに召集をかけるよ」

今度は憲治が深くうなづく番となった。 

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